新卒採用はコンピテンシー評価の時代
コンピテンシー評価とは
社内評価基準から始まったコンピテンシー
 
コンピテンシーとは、社内で実際に活躍している人材(ハイパフォーマー)の特性を分析し、それを社内の人材評価基準にすることで人材のレベルアップを図ろうとして始められました。そうしたハイパフォーマーの特性を「コンピテンシー」と呼び、それらをまとめたものを「コンピテンシーモデル」と呼びます。コンピテンシーモデルは、いわば「人材のベンチマーク」とも呼べるもので、それを社員が目指すべき「行動特性」としたのです。

たとえば自社の営業部門におけるハイパフォーマーの行動を分析した結果、「情報収集力」に長けており、それに基づいて取引先の攻略方法を「論理的」に練り上げ、顧客訪問前には「事前準備」を徹底して行い、顧客ごとに「仮設・検証」をしっかり実施することが、高い営業成果を安定的に上げられている要因だとわかったとしましょう。その場合、「情報収集力」「論理的思考力」「事前準備の徹底力」「仮説検証力」が「コンピテンシー」だと判断されます。そしてそれらを体系化してコンピテンシーモデルが作られることになります。

こうしたコンピテンシーという概念は日本でも20年前頃から普及し、各社とも自社のコンピテンシーモデルを作成し、それを主に「昇格審査」などに活用するようになりました。

コンピテンシーの評価方法

典型的なコンピテンシー評価は個別面談方式で行います。本人に「成功体験」を話してもらい、「どういう状況」の下で「どんな行動」を「どんな意図」でとったかを確認していきます。そうした中で、どのような「意図的行動」が成果を生み出す原動力となったかを判断します。そうした「成果の原動力」となった要素が「コンピテンシー」です。

ここで重要なのは、あくまでも「行動」として確認された事実を判断材料(評価材料)とする点です。いくらすばらしい考えを持っていたとしても、それが「行動」として発揮されない限り、コンピテンシーとは認められません。なぜならコンピテンシーは「成果を生み出す原動力」となるものであり、成果は「行動」を通して実現されるからです。

このようにコンピテンシーは成果を生み出す原動力として発揮されていれば、極端に言うと「何でもよい」のですが、上記のように「目指すべき人材ベンチマーク」としてコンピテンシーモデルを作成している場合は、そのモデルに社員を近づけることが目的ですので、評価されるコンピテンシーは「コンピテンシーモデル」として定義されているものに限られることになります。

コンピテンシー評価の採用活動への活用

このように「社内人材の評価基準」として作成・普及したコンピテンシーですが、やがて採用にも活用する動きが広まります。まずコンピテンシー評価が始まったのが「キャリア採用」です。採用面接でコンピテンシーが使われるようになりました。

その理由は先ほどの「営業職」の例を考えるとわかりやすいでしょう。キャリア採用の場合、応募者はこれまでにも職務経験がありますので、社内の人材と同様にこれまでの職務遂行に関して「成功体験」を聞き、その中からコンピテンシーを判断するという方法がそのまま使えることになります。
 
即戦力として採用する「キャリア採用」の場合は、まさに「成果」を転職後も再現できるかどうか判断することが重要ですので、キャリア採用にはコンピテンシー評価がたいへん都合がよかったのです。

新卒採用への広がり

キャリア採用でたいへん便利に活用できることがわかると、新卒採用でもコンピテンシーを活用しようと考える企業が出て来ました。

ただ新卒の場合は職務経験がありませんので、新卒採用で活用する場合には工夫が必要になります。職務遂行の中で確認していた成功体験を、「学生生活の中での成功体験」に置き換える必要がありました。さらに、学生生活における成功体験の原動力となっていたものが、仕事でも成果を上げる原動力となりうるかという判断もしなくてはなりません。

こうした「学生生活」から「仕事」への、いわば変換作業を伴うため、新卒採用でのコンピテンシー活用はキャリア採用ほど容易ではありません。

そうは言っても、従来から新卒採用の面接で判断材料にしてきたのは「学生生活」であることを考えれば、その点はコンピテンシーを導入しても同じですので、従来と比べて新卒採用の面接がさほど難しくなるわけではないと言えるでしょう。

こうして新卒採用においてもコンピテンシー評価を活用することで、学校名などといった「ブランド」と関係なく、優秀な人材を採用するのに役立てている企業も増えてきています。さらには採用面接だけでなく、書類選考にもコンピテンシーを活用する企業も現れており、今や新卒採用でもコンピテンシーをうまく活用できるかどうかが人材獲得競争の成否を分けるようになってきたとさえ言えるのです。

また、コンピテンシーを使って求める人材を定義することで、自社独自の選考基準をつくることも可能です。独自性の高い選考基準をつくることは、同じ人材を他社と奪い合うのを避けることにも通じますので、深刻化する内定辞退を防ぐことにもつながります(「コンピテンシーによる独自性の高い人材像づくり」)。

さらに、コンピテンシーは入社後の人事考課にも活用できます。人事考課もコンピテンシーに基づいて実施することで、事実に基づいた納得性の高い評価にしていくことが可能になる上、採用選考時のコンピテンシー評価と比較することで採用時のコンピテンシー面接の精度を高めていくことにもつなげられます。コンピテンシーによる人事考課は改めてご説明していますのでそちらもご覧ください。

新卒採用をめぐる動きの中でも、AIを使ったエントリーシートのコンピテンシー評価サービスを提供する企業や、コンピテンシーを活用して内定辞退防止コンサルティングを提供する企業なども現れてきています。

さらに最近特に普及のめざましい「ダイレクトリクルーティング」でもコンピテンシーが効果を発揮する可能性があります。